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新上屋跡
(しんじょうやあと)
市指定史跡
本居宣長が、江戸の国学者賀茂真淵と会った旅宿が新上屋である。参宮街道に沿い、和歌山街道分岐点に近いこの界隈には、本陣や馬問屋などが並び、往還の人の絶えることはなかった。宣長は、遊学を終え松阪に帰った頃、真淵の『冠辞考(かんじこう)』を読み、強い衝撃を受ける。そんな時、行き付けの本屋柏屋が、真淵参宮の情報をもたらした。やがて旅宿に訪ねた宣長に、真淵は懇(ねんご)ろに学問の心得を説いた。宝暦(ほうれき)13年(1763)5月25日の夜のことである。このとき、宣長34歳、真淵67歳であった。この対面は、後に佐佐木信綱の「松阪の一夜」の文章で広く知られることとなった。その冬、宣長は真淵に入門し、手紙で教えをうけることとなる。