本文
三雲管内
102-180
忘井
(わすれい)
市指定史跡
平安時代/市場庄町/昭和37年11月15日
別れゆく 都の方の恋しきに いざ結びみむ忘井の水
この和歌は、斎王群行(さいおうぐんこう)に同行した官女甲斐の詠んだ歌である。古代、天皇の即位ごとに伊勢神宮の斎宮へ斎王となる皇女が派遣され、その行列を斎王群行と言った。天仁元年(1108)の卜定(ぼくじょう)(占いの儀式)により天永元年(1110)9月に群行が催された。
官女甲斐は、伝説上の斎王を除き、大来皇女から数えて49代目の斎王、あい(「女」へんに「旬」)子内親王(在任期間1108~1123年)に従って壱志駅家(いちしうまや)(現松阪市曽原町付近とする説と松阪市嬉野宮古町付近とする説がある)の頓宮(とんぐう)に一泊し、この忘井を通った際、遠く都を離れはるばると伊勢の地に来て、望郷の念やみがたく涙とともにこの歌を詠じたといわれている。