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SDGs×松阪市 オンライン講演会 第2回 報告

ページID:0113836 更新日:2022年10月27日更新 印刷ページ表示

SDGs×松阪市 オンライン講演会  第2回
『自治体の財政は厳しい? ~未来のまちを財政から考える~』(報告)

登壇者(話題提供者)

松阪市総務部財務課 田中 広毅(たなか ひろき) さん

ファシリテーター

NPO法人Mブリッジ/三重県SDGs部会員 米山 哲司(よねやま さとし) さん

内容

令和4年 10月20日(木)に、SDGs×松阪市 オンライン講演会 第2回『自治体の財政は厳しい? ~未来のまちを財政から考える~』を開催いたしました。
登壇者の田中 広毅さんからは、自治体財政の基本的な仕組みから始まり、財政の視点からのまちの課題、そのむずかしい部分についてお話をしていただきました。また前回から引き続き米山 哲司さんに参加していただき、SDGsの視点からもまちの課題を紐解く手助けをしていただきました。

 

【登壇者 田中 広毅さん】

(自己紹介)

皆様、ご参加いただきありがとうございます。
まず初めに、自己紹介をさせていただきたいと思います。

私は現在入庁をして10年目になります。まだ、いわゆるヒラ職員ですね。
財政担当としては3年目となります。

課外活動となりますが、自治体改善マネジメント研究会とNPO法人で副理事長としても活動させていただいております。

(自治体財政の基礎知識)

それでは、本題のほうに入っていくんですが、まずは自治体財政の基礎的なことについてお話をさせていただきます。

財政というのは、自治体が税などの収入によって行う経済活動を指します。
財政には3つの役割があります。

・公共サービスの提供(道路、教育、消防、水道など)
・所得の再配分(社会保障など)
・地域経済の活性化(需要の創出)

これらの遂行のために、収入と支出を適切に管理するのが財政運営となります。

自治体の財政のルールとして、
・ある年度に得た収入はその年度中に支出しなければならない
という原則があります。これは民間企業にはないルールなので、かなり独特に感じられると思います。

財政の話をすると、予算と決算というものが出てきます。

予算とは、1年間の収入と支出の「見込み(計画)」のことです。
予算は、当初(前年度中に決定)、補正(当年度中必要に応じ複数回)とありますが、当初、補正ともに議会の承認を経て成立します。予算は常に収入と支出が一致する(使途不明や収入不足はない)ことになります。

対して、決算とは、1年間の収入と支出の「実績(結果)」のことです。
決算も予算と同様に、議会の承認を経て成立します(実際の使途の適正性を審査)。
一般的に、財政状況は決算の内容から判断しますが、実際は、単純な赤字/黒字だけでなく複数の指標により判断します

では、次は収入と支出について見ていきます。

収入とは、各種税金、行政サービスの使用料、国や県などからの補助金、貯金の引出し、前年度黒字分のキャリーオーバー、借金(主に建設事業用)などがその内訳となっています。

対して、支出とは、人件費、各事業経費、扶助費(各事業経費の内、とりわけ社会保障関連)、補助金、貯金への預入れ、前年度事業のやり残し、借金返済などがその内訳です。

次に、自治体の貯金と借金の話です。
自治体の貯金を基金と言います。その年度で得た収入はその年度で支出しなければならない、というルールを先ほど説明しましたが、この貯金への積立も支出になります。
なぜ自治体はなぜ貯金が必要か、ということですが、この貯金は、災害が起こった時や、新型コロナへの緊急の対応のめの支出や、大規模事業への計画的積立のために使われます。

借金は地方債と言います。よく自治体の借金は話題になりますが、そもそも、自治体は借金してもいいのでしょうか? 答えは、原則、建物や道路などの建設事業の為の借入れをする場合は認められる、となります。
建物や道路などは、建てた後も長い期間に渡って住民が利用するものなので、将来の住民にも税を負担してもらうために、あえて長期ローンを組みます。

貯金も借金も、多ければいいというものではありません。重要なのは「身の丈にあった規模か」ということだと思います。

ここまで自治体財政の基礎知識をお話させていただきました。
だいぶ駆け足で進んでまいりましたが大丈夫でしょうか。

(持続可能な財政とは)

ここから本題である、持続可能な財政とは、というお話に入っていきたいと思います。

今日本では人口が減少し、少子高齢社会化も進んでいることで、自治体の税収が下がると言われています。
では、松阪市は近年、収入の約3割を市税が占めていますが、このまま人口減少や少子高齢化で税収が落ち込むと赤字になるのでしょうか。

答えとしては、よほどマズい財政運営をしない限り赤字にはなりません。
国は、毎年各自治体の「最低限必要な支出」を試算し、収入見込みに不足があれば、その差額を交付しています。税収が減少しても、ある程度基金があれば直ちに収入不足に陥ることは無く、身の丈にあった収支に見直せば再び財政は安定します。

では、赤字にならないとして、黒字が大きければ大きいほど、そのまちは「いいまち」なのでしょうか?

黒字は、税収の未使用でもありますので、大きすぎるのも問題だと言えます。
自治体予算は収入=支出なので、すべての収入の使途が明確になっています。もちろん、赤字にならぬよう収入は少なめ、支出は多めに見積もりますから、基本的には収入のほう支出より大きくなるのですが、この差額があまりに大きい場合は「皆さんの税がそれだけ使われなかった」可能性があるので注意が必要です。

私は、特別な事情がない限り、決算は「ギリギリ黒字」が理想だと思っています。

さて、では講演会のタイトルでもある「自治体財政は厳しいの?」という質問についてお話します。

今までお話したとおり、よほどのことがない限り、自治体の財政は破綻しません。
しかし、実際は、ほとんどの自治体が財政の先行きに不安を抱えています。
それはなぜでしょうか。
その理由は「過去の決定」が「未来の可能性」を圧迫しているからです。

全国の自治体は、住民にとって「よりよいまち」をめざして、その時々の地域ニーズを捉えた独自事業を次々生み出しています。しかし、これらの独自事業は国が試算する「最低限必要な支出」には含まれていないことが多く、特別な財源がない限り、徐々に余裕が無くなってきてしまいます。
過去の事業が、これからの事業の隙間を無くしているという状態です。。

「じゃあ、過去の事業やめればいいじゃん」と思われる方もいると思います。
しかし、それがなかなか簡単には言えないのが現実です。

時間を取りますので、次の例について、考えてみてください。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あなたは「市民みんなが幸せなまちづくり」を掲げ当選したA市の市長で、現在、就任2年目となる来年度の予算案の検討中。若者担当課から次の提案が。

若者「雇用機会の創出こそが、若者の定住、子育て支援につながります。A市の将来を考えれば、
今こそ企業誘致に投資すべきです!」
市長「なるほど、しかしA市の財政に多額の投資を行う余裕はない。」
若者「現在の高齢者政策をいくつか廃止したらいいじゃないですか!」
高齢「A市は現在、若者より高齢者人口の方が多く、高齢人口はしばらくは高止まり。
市長、高齢者政策はどれも必要不可欠なものばかりです!」
若者「高齢者支援はもう十分やってるじゃないですか、もっと若者を支援しましょうよ!」
高齢「若者支援だって充実しているだろう、若者支援政策をいくつか廃止したらどうだ!」

Q.さて、あなたならどのような判断をしますか?
a.企業誘致を実施し、高齢政策をいくつか廃止する
b.企業誘致を実施し、若者政策をいくつか廃止する
c.企業誘致を実施せず、高齢者、若者とも現在の政策を継続する

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(おおよそ回答がa,b,c同じ程度に分かれる)

アンケートの回答、ありがとうございます。
ちょうどいい具合に分かれましたね、ものすごく偏ったらどうしようかと思いました(笑)
見ていただいたらわかるように、個人の価値観はバラバラです。同じアンケートを高齢者に行ったらどうでしょうか。また違った結果になると思います。

SDGsは「誰一人取り残さない」というのを誓っていますが、ではA市がめざす「市民みんなが幸せなまち」とはどんなまちでしょうか。

それを見つけるためには、住民や企業、自治体が立場を超え、同じ「地域の一員」として対話することが必要です。
そして、みんなが納得できるビジョンと優先順位(計画)をつくることが、「誰一人取り残さない」ためには大事だと思います。


ご清聴ありがとうございました。

 

参加者の声

・めっちゃ分かり易い話でした!自治体財政って独特ですね。


・コロナ禍だったり公共サービスの維持など財政運営の難しさを分かりやすく知ることができました。


・全員を納得させることの困難さを感じました…(田中さんの出した問いに対して)。


・難しい話だと思いますが、簡潔に話を聞くことができ新鮮でした。


・わかりやすいお話ありがとうございました。財政だけでなく、(田中さんに)色々な分野で活躍して欲しいです。


・数字や制度的な印象が強い財政ですが、田中さんの思いや視点が感じられ親近感が湧きました。そんな方が財政を担っておられるのが市民にとって幸せに思います。


・財政と聞くと少し固いイメージがありましたが、より住みやすい楽しいまちにするための新しい事業を考えるためには、まず自分の町の財政を理解する必要がある事を学べました。


・自分で払った税金をどう使われているか…考える機会がなかなかなかったので、とても良い機会でした。
 


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