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北海道の名付け親「松浦武四郎」

北海道の名付け親・松浦武四郎

 文政のおかげ参りが起こる少し前の1818年、松浦武四郎は、伊勢街道沿いの一志郡須川村(現・松阪市小野江町)に生まれています。後に「北海道の名付け親」と称され、道内の各地には記念碑が建ち、今なお、顕彰され続けています。そんな武四郎の魅力や功績について、松浦武四郎記念館の学芸員・山本さんにお話を伺いました。

 山本命さん↑山本さん

「武四郎は幕末において蝦夷地を6回訪れます。調査はアイヌの人々と共に行い、北方四島も含め極めて詳細な地図を制作しました。この地図からは、川の細かな流れや土地の高低、9800におよぶアイヌ語の地名を見て取ることができます」

東西蝦夷山川地理取調図の全体図↑東西蝦夷山川地理取調図(全体図)

東西蝦夷山川地理取調図の拡大図↑東西蝦夷山川地理取調図(拡大図)

 山本さんに促され、原寸大の地図模型に目を凝らすと、細かな字が確かに読み取れます。なかには「サッポロ」など見覚えのある綴りも。蝦夷地が大多数の日本人にとって未知の大地だった当時からすれば、衝撃的な完成度です。木版多色刷りで出版したこの地図をはじめ、武四郎は151冊にも及ぶ調査記録を残しました。

「中には、武四郎が編集、執筆、ブックデザインをし、当時の人気絵師に挿絵を描かせることで少しでも多くの人々に関心をもってもらうための工夫を凝らした本もあるんですよ。」

 多くの出版物で北海道の情報を伝えた武四郎。その意欲の源はアイヌの人々やアイヌ文化への敬意にほかなりません。

「武四郎は、多様性を尊重する人物でした。アイヌの人々は同じ日本に暮らす民であり、彼らが大事にされ、彼らと共生するということが大切であると考えました。」

松浦武四郎記念館松浦武四郎記念館2↑松浦武四郎記念館

 民族の多様性を説き、何事にも真摯に向き合った武四郎の誠実さが当時の人々の心を捉え、今でも北海道各地に記念碑が建つほどになったのです。
 当時、蝦夷地を最も理解する人物であった武四郎は、北海道の名付け親にもなっています。武四郎が提案した名称案は「北加伊道」。「加伊(カイ)」はアイヌの古い言葉で「この地に生まれた人」という意味を持つのだそう。最終的に「カイ」に「海」の字をあてて「北海道」という名前が誕生しました。

北海道と提案した書物↑道名之儀二付勘弁申上候書付

登って下りて一泊二日の富士登山に、
大台ケ原探検。生涯旅の人だった超人

  武四郎が蝦夷地に入ったのは28歳~41歳までの時期。その間に吉田松陰ら志士との交流もありました。

 そして武四郎が生涯に訪れた場所は北海道に限りません。

「武四郎は日本中を旅しているんですよ。初めての旅は16歳。17歳で全国をめぐる旅に出て、19歳で四国八十八ヶ所めぐりをし、その後長崎に。朝鮮半島に渡航しようとしましたが断念。鎖国時代ですからね。その長崎で『ロシアが凍らない港を求めて南下している』という話を耳にし、日本の危機を感じた武四郎は26歳で蝦夷地探検を決めました」

 それにしても武四郎の健脚ぶりには驚かされます。生涯で富士山には二度登頂、どちらも麓から頂上までを一泊二日で登って下りてきています。しかも二度目は70歳のとき。「武四郎は竹川竹斎から『神足歩行術』を学んでいたのでは」と言う人もいるそうです。

 思考も行動も規格外で、人生まるごと旅のような武四郎。伊勢街道という、さまざまな身分や境遇の人々が毎日行き来する様子を見て育った四人兄弟の末っ子が、旅を志すようになるのは、自然の成り行きだったのでしょうか。そんな武四郎ですが、晩年に心を傾けたのが、生まれ故郷・三重県と奈良県にまたがる大台ケ原の探査だったということが、また心に響きます。

<関連情報>

松浦武四郎記念館

松浦武四郎記念館の外観<外部リンク>

 武四郎の生涯や功績を映像やパネル展示で分かりやすく学ぶことができる施設。令和4年(2022)4月にリニューアルオープンし、紹介映像やパネル展示を一新。中でも、武四郎が日本全国から集めた古材(法隆寺や伊勢神宮のものも)で建てた書斎「一畳敷」を忠実に再現した原寸大模型は必見です。実物は国際基督教大学構内・泰山荘(東京都)に現存しています。

松浦武四郎記念館<外部リンク>

松浦武四郎誕生地

松浦武四郎誕生地の外観

 松浦武四郎記念館から徒歩7分の伊勢街道沿いに築200年以上といわれる武四郎の実家が残っており、松阪市指定史跡です。復原整備を経て、平成30年(2018)2月から一般公開されています。

松浦武四郎誕生地<外部リンク>

武四郎まつり<外部リンク>

武四郎まつりでアイヌ古式舞踊を踊る様子

 武四郎の生没月が2月であることから、毎年2月の最後の日曜日に開催される武四郎を讃えるお祭り。国の「重要無形民俗文化財」に指定され、ユネスコ無形文化遺産でもある「アイヌ古式舞踊」の披露や、北海道の特産品販売などが行われます。

 

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