チーム医療

印刷用ページを表示する掲載日:2016年4月5日更新

桜井正樹
院長 櫻井 正樹

 桜も早満開を過ぎ、日々暖かさを感じるこの頃。
 地球温暖化の為でしょうか、年々開花も早まっている様です。
 桜は卒業式や入学式の記憶と結びつく花ですが、だんだんと季節感が変わって行くのでしょうか。ちなみに過去100年で、平均気温は1.1℃ほど上昇しているため、実際入学式頃の桜満開が、すでに無くなっている地域も増えています。
 桜満開の4月1日に、私は新入職員に病院の理念と、果たすべき役割を講義。
 今日はチーム医療の講義を行います。  チーム医療という言葉は実はそれほど古いものではありません。
 1970年、米国のシカゴで、医師、薬剤師、栄養士、看護師などの多職種が集まり、患者さんのために栄養療法をどうするか討議したのが最初といわれています。これが栄養サポートチーム(NST)の始まりです。現在では、さらに当院をはじめとして各病院に感染制御チーム(ICT)、床ずれ(褥瘡)、緩和ケア、摂食・嚥下チームなど、多くのチーム医療が導入されています。そして、厚労省は自発的発生に任せるのではなく、チーム医療を政策的にも後押しするために、診療報酬での経済的な保証をしています。

 なぜチーム医療は最近まで無かったのか?
 実はチーム医療が行われるのに必要なキーワードが存在します。
 それは専門性と水平性と患者志向の3つです。

 話が飛びますが、ナイチンゲールをご存じでしょうか。
 近代看護学の、医療統計学の基礎を築き、また教育者としても偉大な希有な人物ですが、日本の一般の人には白衣の天使の言葉が有名でしょう。
 ナイチンゲールの活躍した160年前、医療界は職種の専門性がはっきりせず、医師のみが専門家といった状態でした。
 従って、医師が指示を出しその他の人々はすべて、医師の言うことを聞くしかない状態でした。
 クリミア戦争時(ロシア対イギリス+フランス+トルコ+イタリアの一部が主としてクリミア半島で戦った大戦:現在の状況に似ています。戦争の死者は80万人)に、ナイチンゲールは、多くの報道陣の注目を集める中イギリス軍の後方支援基地であるスクタリに看護団を率い敢然と乗り込みます。
 しかし、スクタリの陸軍軍医長官は看護婦をただの下働きのお手伝いさん程度にしか見ていない状況ですので、現場での改善提案も通らない状態だったようです。
 このような状態ではチームは成立しません。 (ナイチンゲールが実際に看護の現場に立ったのは2年半のみですが)
 ナイチンゲールはその後の半生を看護教育と看護学の発展に尽くしました。
 医療界はその後看護師を皮切りに各職種が分化確立して行きます。
 チーム医療は専門性の確立があって初めて成立する概念でもあります。
 医療に携わる専門職種が増えはしましたが、しかし、欧米においても1970年までは、医師を頂点とした階級制度が色濃く残っていました。

  第二に水平性とは、階級制度を取り払い、あくまでも専門職種同士の平等な関係を意味します。
 もちろんチームにリーダーは必要ですし、出来ればそれは医師である方がすっきりはするかもしれません。しかし、議論はあくまでもフラットな関係で行われなければなりません。 (このところを勘違いして、相変わらず160年前の考えで行動している医師も居ますが)。

   第三に患者さん中心の考えが持ち上がってきたことです。
 少し前まで、患者さんは医療の事は解らないのだから、医師の方針に従えば良いという考えが多かったのですが、最近は説明を行って患者の自己決定権を尊重することが基本になりました。
 日本語で言うところの説明と同意;英語ではインフォームドコンセントという言葉です。 とは言っても医療の専門家では無い患者さんに説明をしたって、患者さんすべてが自信を持って自己決定出来る訳がない。
 この時患者さんを中心に置き、各職種が協働して解決の糸口を探るのがチーム医療の望みうる姿と思います。
 簡単に見えますが、それぞれの職種により考えが違いますので、結論がなかなか出ないこともあります。
 ただし、先に述べたように議論はあくまで自由に行われる必要があります。
 今説明した3つの要素が揃ってチーム医療が成立するのですからチーム医療は現場の医療の最先端の概念と言えるでしょう。

 さて最近は新しい職種も出てきています。
 まだ公的な資格にはなっていませんが、診療情報管理士とか、医師事務作業補助者などの職種です。
 これらの職種もチーム医療の中に入り込み、よりよい医療の実現に向けて協働してゆければと考えます。

 当院の現状ではまだまだ十分ではありませんが、最近嬉しい事実を知りました。
 それは、整形外科病棟で看護師、リハビリ技師、管理栄養士を中心に、栄養面からの褥瘡予防に取り組むチームが活動し、効果を上げつつあることです。一部報告が松阪地区作業療法研修会でも発表されました。
 このように末端での自発的取り組みと改善が数多く行われることが医療の効率を上げ、安全の強化にもつながると思います。
 チーム医療の中に多くの宝物が埋まっていると考えています。
 今後如何にチームを育てるか考えて行きたいと思います。

平成28年4月4日